Realmac software – Courier

Realmac software から リリースされた “Courier”。「配達人」の名を持つこのアプリケーションは、封筒 (envelope) と切手 (stamp) をモチーフとして、ファイルをオンラインの共有サービスにアップロードする。これまでにも美しいビジュアルの UI を生み出してきた Realmac software が、遊び心いっぱいの UI で送り出した、珠玉のソフトウェアである。

アイコンは配達人らしい、メッセンジャーバッグをモチーフにしている。緑がかった青を基調として、絶妙なコントラストで描かれている。またステッチの表現や、Realmac software の頭文字から “RMS” とプリントされている表現など、細かい部分までしっかりと描き込まれている。

最初の起動直後にはビデオによるデモが観られる。最近よく見られる手法であるが、ユーザーが使い方に迷わないもっとも確実な方法であろう。

UI は、封筒の並んだ棚をイメージしたものである。棚のモチーフは近年の流行であろうか。また木目調も最近は多く見られる。注目したいのは画面中央下に見られるスイッチ型のコントロールだ。iPhone の標準 UI である UISwitch が登場して以来、この形のコントロールはデスクトップにも普及してきた。Courier ではこれを、封筒のモードと履歴のモードを切り替えるのに用いている。

封筒が並ぶ表示

履歴が並ぶ表示

さて、このアプリケーションを購入するまではデモモードとして5回までの試用ができる。このときウインドウ右上には、残り試用回数が表示される。ウインドウ右上に試用中の表示をするのは最近のシェアウェアにありがちなことであるが、このように少し凹ませるような表現は目新しい。いずれにしても、ウインドウのタイトルバー部分に自前で何か描画するのは今後も流行していくだろう。

このボタンをクリックすると、購入を促す画面が表示される。このときアプリケーションの内部か、ウェブブラウザかのどちらかで購入できる。アプリケーション内からスムーズに購入できることで、購入までの敷居を少しでも下げようという姿勢が垣間見える。

購入を促す画面

実際に利用する際は、はじめに封筒を作成、編集する。この封筒はアップロード先やアップロード時の設定などをまとめておく機能で、複数作成できる。画面には封筒の表側と、サービスを表した切手が並んで表示され、この封筒に切手をドラッグアンドドロップする。はじめてそのサービスを使う際には、切手から吹き出し状の認証画面が表示される。認証できると次はアップロードの設定画面がやはり吹き出し状に表示される。吹き出し状の UI は、コンテキストをはっきりさせる上で十分に有用であり、Apple 自身 iOS における UIPopoverController の形で採用しているほか、多くのアプリケーションで見ることができる。

Ember への認証画面

Ember へのアップロード設定画面

こうして作成されたアップロード設定のセットである封筒は、アップロード先を元に自動でデザインテーマが設定される。このデザインテーマは “.courierEnvelopes” の拡張子を持つプラグインバンドルになっており、あるいは今後追加することも可能になるかもしれない追加するための SDK が製品ウェブサイトでリリースされている。この SDK には Photoshop 用のテンプレートや、プロパティリストの書き方を説明する文書、サンプルのデザインテーマが入っており、デザインテーマに必要な3つの画像を比較的簡単に作ることができる。(2010/09/03 追記)

アップロード先に Ember を設定した封筒

アップロード先は初期状態で

が選択でき、また “.uploader” 拡張子のプラグインバンドルで、追加することができる。現在のところ公式に

のプラグインが提供されている。プラグイン開発用の SDK が公開が予告されていることから、対応するサービスは今後も継続的な増加が見込まれ、Objective-C 開発者であれば自分で増やすことも可能であろうこの SDK には Ember プラグインのサンプルコードと、テンプレートのインストーラ、ドキュメントが入っており、すぐに開発を始められる。(2010/09/13 追記)

アップロードするにはこの封筒に文書や画像、ビデオなどのファイルをドラッグアンドドロップする。そうするとファイルが封筒の中に入る。このとき複数のファイルをまとめて入れることもできる。そしてタイトルや説明、タグに加え、サービスごとの設定をし、ウインドウ右下の “Deliver” ボタンを押すことでアップロードが開始される。

アップロード中は履歴画面に移り、Mac OS X 10.6 から追加された Core Location フレームワークから位置情報を取得し、地図を使って進行状況を表示する。位置情報が取得できない際にはその説明とともにプログレスバーが表示される。このプログレスバーは atebitsTweetie などでも使われているデザインで、シンプルなこのかたちが普及しつつある。

全体として遊び心に満ちており、また Twitter の普及にともない伸びてきたファイルを簡単にアップロードしたいという需要にも、分かりやすく簡単な使い勝手で答えている。今後プラグインが十分増えれば、ファイルアップローダーの決定版的アプリケーションとして不動の地位が約束されるだろう。

実際に利用している様子は Realmac software のウェブサイトに画像やビデオを交えて詳しく紹介されている。ウェブサイト自体もアプリケーションと同じくらいよくできているため、一見の価値がある。

また Courier の最新情報は、Twitter で @courierapp をフォローすると良い。

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